ノイズ

この悪魔に逆らえば医学部は疎か、大学にもいられなくなるだろう。


沢村の脳裏にふと、両親の顔が浮かんだ。


沢村の家は決して裕福ではない。


自分を医学部に入れるため生活を切り詰めるだけ切り詰め、パートの掛け持ちまでして父と母は応援してくれていた。


そんな両親の期待を裏切ることなんて、絶対に出来ない。


沢村は窓から手を離し、有栖川教授に向き直った。


「彼女を……倉内美佳子を部屋から運び出せばいいんですね?」



有栖川教授はニタリと笑って言った。


「思った通り君は頭がいい。‘それ’を車まで運んでくれ。それから、運転も頼むよ」



沢村は頷くとシーツごと美佳子を両手に抱え上げ、廊下に出た。


常夜灯だけを頼りに廊下を歩く。