飯田可奈(イイダカナ)は幼なじみの後藤文也(ゴトウフミヤ)と一緒に、文也の母親である紀子(ノリコ)の運転する車で雛森警察署に向かっていた。


親友だった、坂井裕美の自殺に関する事情聴取のためだ。


裕美と携帯で最後に話したのは可奈なのだから、善良な一市民として警察に協力するのは構わない。


だが、よく調べもせずに自殺として処理しようとする警察には納得いかない物を感じる。


可奈はため息を付くと、車のフロントガラスに額を押し当て、車窓をぼんやりと眺めた。


午後7時を過ぎたというのに、日が長いせいか外はまだ明るい。


公園の前を通り過ぎると、数人の子供たちが遊んでいる姿が見えた。


あたしも小学生の頃、裕美と遅くまで外で遊んだっけ…


可奈の目に涙がじわりと浮かんだ。


「ほら。これで拭けよ」



可奈と一緒に後部座席に座った文也が、ハンカチをくれた。


「…うん。ありがと」



ハンカチを受け取った可奈は涙を拭いた。