見慣れた制服に、セミロングの髪は間違いなく沙織だ。


覚束ない足どりのせいか、体がフラフラと左右に揺れている。


「さおりっ!」



沙織の姿を確認した可奈は、横断歩道を渡ろうと走った。


ちょうど信号がチカチカと点滅し始め、今まさに青から赤へと変わろうとしている瞬間だった。



キキーッ!!



車のクラクションと、急ブレーキの音が辺りに響き渡る。


白い乗用車が可奈の左側を掠めて急停車した。


「バカヤロー!死にてぇのか!」



乗用車を運転していた中年の男性は、可奈を大声で怒鳴りつけ、舌打ちをしながら走り去った。


「可奈おまえ、何やってんだよ!」