もしママが生きていたら、あんな風に家族でご飯食べに行ったりしたのかな。



さっきの女の子と、子供の頃の自分が思いの中で重なる。


記憶の中の母親はいつも笑顔で、可奈は一度も叱られたことがなかった。


おっとりした性格の人なのか、可奈がイタズラをしてもただニッコリ笑って、優しく間違いを諭すのだった。


体が弱かったから、ほとんどベッドの上にいることが多かったけど、よく絵本を読んでくれたっけ。


可奈は懐かしさで胸がいっぱいになるのを感じた。


再び信号が点滅し、赤から青に変わった。


横断歩道を渡る人の波に、制服姿の女子高生の姿が見えた。


見覚えのある、白いブラウスに紺色のスカート。


東邦学園の制服だ。


「……沙織?」