濡れた瞳がどこか大人っぽく見えて、文也は少しドギマギした。


急いで目を逸らし、前方の道路をボンヤリと眺める。


週末のせいか、サラリーマンやOL達が笑いながら楽しそうに通り過ぎて行く。


連れ立って歩くサラリーマン達の日常は、平和そのものに違いなかった。


俺だって、同じように平和な毎日を楽しんでいたんだよな。


ほんの数日前までは。


ま、ここまで首突っ込んだんだからしゃーないか。



文也は軽くため息を付くと、もう一度可奈の方を見た。


可奈も同じように道路を眺めていた。


マンションの前は駅と繁華街に近いので、車の往来もかなり激しい。


目の前の信号が青になり、幼稚園位の女の子が母親に手を引かれて横断歩道を歩いていた。