「立花さん。指輪は明日警察に届けるとして、もう夜も遅いですし、そろそろ可奈ちゃんと文也くんを送ってあげた方が……」



それまで沈黙を守っていた佐々木が、立花に向かって促すようにそう言った。


「…あぁ。そうだな」



立花はまだ視線を下に落としたままだったが、佐々木の言葉に頷いて見せた。


「やっべ、もう9時だぜ!早く帰らないとまた母さんに説教されっぞっ」



文也がわざとらしく大声をあげた。


「えぇ!もうそんな時間なの?」



可奈はポケットから携帯電話を取り出すと、急いでディスプレイを確認する。


待受画面のデジタル時計は間もなく9時になろうとしていた。


「それじゃあ、佐々木さん俺たち帰ります。ごちそうさまでした」


可奈と文也の二人は佐々木に頭を下げ、玄関に向かった。