｢お兄ちゃーん、今日ハンバーグだってぇー｣



トントンと勢いよく階段を上がってくる足音がした。


坂井と一回り違う年齢の、妹の裕美が勢いよくドアを開けて、兄の部屋の中に飛び込んできた。


｢こら裕美！いつもノックしてから入れって言ってるだろう！｣




坂井が裕美の頭を容赦なくゲンコツで叩いた。



｢痛いっ！お兄ちゃんのばかぁ〜｣



裕美はワンワン泣きながら、階段を下りていった。


｢坂井。裕美ちゃんを泣かせていいのか？｣



｢いつものことだから。ま、母さんと一緒にハンバーグ作ってるうちに全部忘れるよ」



坂井はそう言うと、机の上に置いてあったコミック雑誌を手に取った。


裕美のことが気になったが、一人っ子の立花に泣いている女の子の宥め方が解るはずもない。


兄妹って不思議なものだな…


今になって思えば、そんな二人のやり取りが羨まかったのだろう。