｢学生時代って、大学のですか？｣



｢高校だ。俺は大学進学と同時に上京したから、坂井とはほとんど会っていない。ただ、年賀状のやり取りだけは毎年していたんだ｣



立花の脳裏に学生時代の思い出がよみがえる。


坂井とは育った環境も性格もまるで違ったが、不思議とウマが合った。


休み時間はもちろんのこと、放課後もつるむことが多かった。


坂井の家にもよく遊びに行ったが、母親が焼いてくれたチーズケーキが美味かったな。


いつものように遊びに行ったある日のことだ。


｢母さんが夕飯を一緒に食べないかって。いいだろう？｣



｢俺は別にかまわないが…本当にいいのか？｣



｢遠慮するなよ。うちの母さんは何の取り柄もないけど、料理だけは上手いんだぜ？｣



坂井は屈託なく笑ってそう言った。