懸命に目をこらしたが、闇以外は何も見えない。


そうだ。


椅子を手摺り代わりに使って移動しよう。


沙織はスローモーションのようにゆっくり、ゆっくりと両手を前に伸ばして椅子を探した。


「……え?」



沙織の両手が虚しく宙を舞った。


そんな馬鹿な。


もう一度両手を伸ばし、今度はもう少し範囲を広げて探してみる。


「…そんな……どうして……」



椅子などこにもなかった。