子供が歌を歌っている。


歌詞はハッキリ聞こえないが、メロディなら知っている。


自分も子供の頃によく歌っていた、懐かしい童謡だ。


あ……れ…?



いつの間にか、辺りが暗くなっていることに沙織は気づいた。


あまりにも暗いので、自分の位置を把握することさえ難しい。


自分は確かに歯科医院の待合室にいたはずだ。


ブレーカーが落ちたのだろうか。


いや、待合室の電気が消えたとしても窓がある。


例え真夜中であったとしても、ここまで闇に包まれることはないはずだ。