天使と悪魔―先生と彼女、二人の特別な事情

◆すれ違い1/3◆

1月14日。

この日付には二つの意味がある。

まずは私自身の論文提出日。

そして、

みずえちゃんの卒論提出の日。

製本に一週間かかるので両方とも本当にぎりぎりだった。

心身ともに限界を超えていた。

提出日前日、みずえちゃんに電話した。


「明日出せばいよいよ終わりだな」

「うん」

「私も論文提出があるが、その後は時間が空いている。卒論一緒に出しに行こう」

ただみずえちゃんの喜ぶ顔が見たかった。卒論を終えた感動を一緒に味わいたかった。

「一人で大丈夫だから」

みずえちゃんは乾いた声で言うと電話を切った。