千里は私の下手くそな説明を最後まで黙って聞いてくれた。

そして、私の左肩に右手を置いて、言った。
「そうして誠実に生きてる茜のことも、きっと判ってくれる人ができると思う。
秦野くんのことも、機会をみて、話し掛けてみようよ。せっかくつながりが持てたと思った人なのに、このままお別れするんじゃ残念だもん」

さらににっこり笑って、千里は続けた。
「私も、わかんないことだらけだよ。でもきっと、いろいろ考えることに意義があるんだよ」

そっか……考えることに意義がある、か。
「誰か偉い人の言葉だっけ?それ」

すると、千里がとびきりの笑顔で、言い放った。
「ん? 萩野千里の名言だよ! 」

私たちは顔を見合わせてぷっと吹き出し、それからおなかを抱えて大笑いしたのだった。