「…髪ビチョビチョだぞ」

「ズボンしか着てない零さんに言われたくないです」

「暑いだろう?」

「目のやり場に困ります」

口喧嘩のようなやりとりに、俺はクククと笑う。

…俺、最近よく笑うな。
心愛と会う前はムスッとしてたんだが…って何考えてんだか。

「おいで、乾かしてやるぞ」

俺が心愛に手招きすると、心愛はびびったように驚いた。

「え…いいんですかっ?」

俺が頷くと、俺にもたれかかるように座った。

ドライヤーでブオォォと乾かしていく。

そのたびに、心愛の髪が俺の顔に当たる。

…甘い、いい匂いだ。

心愛が、ふいに振り返った。