「まー思ってるけどな! 俺も柚もガキだな! ははっ」


白い歯を見せて笑う旬の横顔。
その顔に、胸がキュン、となる。

これはあたしだけの旬。
だって、学校じゃこんな風に笑わない。
これは幼馴染みの特権。
誰にもあげないよ。


「じゃー俺の後ろはガキ仲間の柚の特等席な!」


旬の言葉に頬が火照るのがわかった。

旬のバカ……。
もっと好きになっちゃうじゃんか。


「……っ、うん!」


火照る頬を旬の背中に、くっつけあたしは笑った。
照れくさくて、でもすごく嬉しかった。


このままずっと、学校に着かなきゃいいのに。


そんなことを思っても、叶うわけがなく。
幸せの時間は川の流れのように過ぎてしまう。

学校は楽しくないよ。
だって、旬とクラスが違うんだもん。
友達もいないしさ。


「さー着いた。柚、降りろ」


「ん……」


自転車の荷台から降りると、旬の香りが消えた。
それだけなのに、すごく淋しくて。


「わかってると思うけど、絶対話し掛けんなよ」


旬の言葉に、あたしは少し俯いてキュっと拳を握った。
そして、顔を上げ


「わかってるよ!」


上手に笑った。