「おはよう」
翌日の彼は
いつもの表情だった。
教室に入って一番に
私の席まで来てくれる。
「おはよう」
「待ってたよ」
「ありがと」
彼は目を反らして
ぶっきらぼうにそう返す。
だけどその口もとが
柔らかな笑みを見せていて
私は
(よかった)と
心の中でそう思った。
「あのさ!」
音羽クンは急に向き直り
少し長い前髪を触りながら
言い辛そうに私を見る。
「どうしたの?」
「タイミング悪いけど」
「明日から練習で休むんだ」
「そうなんだ…」
「出席平気なの?」
「多分ね」
苦笑いをする彼の表情は
少し幼く見える。
また胸が、どきんと鳴る。