「おい真田、戸田。動くってよ」

ぽん、と麗が私の頭を軽く叩いた。
私は麗に礼を言い、日奈子に「行くよ」と囁いた。日奈子は頷き、目を擦りながら覚束無い足取りで歩き始めた。

「ねえ、何処行くの?」

私は麗の制服を引っ張って訊いた。
麗は少しよろけたが持ち直して言った。

「家庭科室。冷蔵庫に食料があるかもしれねぇって大吾と真綾が言ってた」

私は「ふーん」と適当に相槌を打った。そして携帯電話を取り出した。
最近お母さんにお願いして買って貰った淡い水色の携帯電話だ。

私は携帯を操作し始めた。お母さんに今の状況を伝えようと思ったからだ。
メールに文を書き、送信する。すると……。

「……何、これ」

私は呟いていた。

『送信できません』の文字。
何度やっても、何度やっても……。『送信できません』の文字。

「……はぁっ!? 訳分かんないっ!」
「ちょ、和音? どうしたの?」

美加が心配して私にそう言った。私は今までのメールの事を全て伝えた。

「えっ、何それ!? じゃああたしも送信できないってゆーの!?」

美加は急いで携帯電話を取り出した。
私と美加の異変に気付いたのか、大吾が「どうした?」と尋ねて来た。

「メールが送れないの! 最悪!」

私は早口でそれだけ言った。
その時だった。