【和音side】

 

「和音っ! 早く早くーっ! 遅刻しちゃうよっ!!」

玄関で靴の踵を揃えていると、家に扉の前で美加がそう言った。

「待ってよ美加!! お母さん、行って来まーすっ!!」

玄関を勢い良く飛び出したあたしの耳にお母さんが「行ってらっしゃい」と言った声が聞こえた。あたしと美加は学校への道を急いだ。

頭には太陽が照り付ける。夏だ。汗が制服に染みる。美加は汗を拭きながら言った。

「暑いーっ! ホント暑いね!! プール始まんないかなー」
「てかまず夏休み入って欲しいよぉー」
「あ、それ同感っ!!」

あたしと美加は今年中学生になったばかりだ。まだまだ分からない事が沢山あるが、それでも学校生活を楽しく送れているのは美加が居るからだろう。

二人で笑い合っていると、後ろから荒い息が聞こえた。振り返ると、そこには同じクラスで友達である日奈子の姿があった。

「あれっ、日奈子。そんなに急いでどったの?」

美加がのん気に話し掛ける。日奈子は私達の姿を見て言った。

「っ、二人共ぉ……携帯見なよ……」

あたしと美加は日奈子に言われて携帯電話を開いた。時刻に目が行く。時刻は7時30分を回っていた。あたしと美加の顔の血の気が引いた。

「ち、遅刻だぁっ!!」

あたしは美加と日奈子と一緒に暑い太陽の下で学校へ向かって走り出した。