「お前、何やってんだ。ちゃんと手袋つけろ」



そう言いながら流水で私の手を洗ってくれたのは怜音だった。



「バレリーナなんだから、手荒れでもしたら大変だ。業務用の洗剤だから、家庭用の洗剤よりキツイから、ちゃんとこれつけて洗えよ?」


「すみません。ありがとうございます」


「ん。お前は、女の子なんだから、そこんところ自覚しなサイ」


そう言って、私の付けているエプロンで手を拭いた怜音は、またキッチンを出て行った。


あの人はやっぱり凄い人だ。


周りのこと、すごく見てるんだ。


ゴム手袋をつけて洗い物を終えて、また保っちゃんの隣に戻ってフルーツを切っていると、保っちゃんがためらいがちに話しかけてきた。