舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜

「待てよ、先に帰ることないじゃん」


「てっちゃん」



息を切らしたてっちゃんがそこにいた。


「くららさん、送っていくと思ったから」


「先生が車で送っていったよ。俺は奈々担当」


「…そぉ」


ちょっとだけ嬉しかった。


だけど口にはださなかった。


やっぱり、この関係が崩れてしまうのを恐れている。


普通、本当に好きで、好きで仕方がなかったら、気持ちなんか抑え切れない。


私とてっちゃんは多分一生このままなんだろう。


「金平糖は昨日振付だったんだろ?もう覚えた?」


「うん。前の公演のDVD見たから。そういえば四年前、真似してこっそり練習してたなぁと思って」



「まぁ、憧れはあるだろうな。俺もカズさんがやってた役とか真似してたもんな、影で」


そんな私たちが今度は主演なんだから、月日が経つのは早いと感じた。


そして私たちのバレエも少しは成長したんだろうと、自分のことながら思った。


いつものように駅でてっちゃんと別れ家路についた。


明日からはバイトもない。


だけど、あのホストクラブにも返事をしなくては…


とてもいい条件を出して私を応援させてと言ったミルクティー色の髪をした怜音。


あの人のこと信じてもいいのかな。