舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜

「買うんですか?」


「うん。売ってるんでしょ?」


「いや…そうなんですけど」



「ホストに売るリンゴはないですか?」



そう言ってミルクティー色は笑った。その笑顔に、なんだか私は罪悪感を感じてしまった。


こんなところで、ホストがものを買うわけがないなんて、偏見を持っていたから。



試食をして買ってくれるなんてまさか思っていなかったから。


「…ありがとうございます。398円です」


「じゃあ、はい」


差し出された千円札と引き換えに私はビニール袋に入れたリンゴを手渡した。



「ありがとうございました。またよろしくお願いします」



お釣りを渡してそう言うと、ミルクティー色は「ありがとう」と言って黒髪のもとへ歩いて行った。


見た目、THEホストな人だけど、話し方やたたずまいはチャラい感じのしない人だった。