舞姫〜貧乏バレリーナのシンデレラストーリー〜

「金平糖の精は、かなり技術もいるし、バランス感覚が抜群じゃなきゃ綺麗に踊れない。お前はバランスが甘いから、無理だろ。実際、俺も奈々に入れたし」



「哲史君!無記名なのにそんなこと言ったら意味ないでしょ!」



「いいじゃねぇか。お前は主役のクララを踊るんだし」



てっちゃんの言葉に、みんなが凍りついた。確かに、くるみ割り人形の主役は金平糖の精ではない。


クララという少女が主役なのだ。



でも…



「でも…グラン・パ・ド・ドゥを踊るのは金平糖の精だよね…」


小さく研究員の誰かがつぶやいた言葉をくららは聞き逃さず、研究員のほうをキッと睨みつけた。



グラン・パ・ド・ドゥとは男女が一組になって踊ること。



くるみ割り人形のグラン・パ・ド・ドゥは金平糖の精と王子が踊るのだ。



事実上、金平糖の精が主役といっても過言ではない。