夢幻(むげん)【完結】



 そういう相田の表情は、悲しげで、でも、どこかすっきりしたような感じであった。



 ……相田もテニス部員で、遥と仲良しだしな……。



「でも、この思いも捨てることができなかったから、伝えることだけはしたかったの」


 そう言うと相田は遼平にキスをした。

 突然の事で避ける暇がなかった。


「っ! 何を……」

「これで貴方への想いを封印するわ。今のは貴方を忘れるための代償よ。……じゃあね、遥ちゃんとお幸せに」


 そして、相田は去って行った。




 遼平も家に入ろうとした時、小さな声が聞こえた。


「……りょう……へい……」