「母さん他に何か言ってた?」


 皆人くんは、お母さんに先ほど目撃されたアレのことを、この声の主に知られてはいないかと心配しているようだ。


 それほどまでに、私とのアレは皆人くんにとって汚点なのだろうか。


 尋常でないほどの悔やみっぷりだったし…


 地味に傷つくし。


「『皆人の部屋、煙たい』って嘆いてた。」


「ふうん、他には?」


 しつこく気にしてる… バカ皆人。


「『肺がんになって死ね』」


「それ、ねーわ、ぜってぇ嘘だし。」


 クールな感じの、軽い笑い声が聞こえた。


 足音が近づいてきて、リビングの扉が再び開けられた。


「入れよ。邪魔くさいヤツいるけど。」


 そう言って、皆人くんは苦笑した。