そんなこと考えている私をよそに、有坂くんは、


「あ~あ、なんかムラムラしてきた。」


 と、なんだか残念そうにそう言うと、また窓の方を向き、机の上に寝そべった。


「奈緒、今日バイトかなぁ…」


 寂しげにそう呟くと、再び眠りに落ちたようで、すぐに有坂くんの後頭部は動かなくなった。


 そっか… 今、有坂くんは奈緒と付き合っているんだった。


 有坂くんの、その一言で、夢見心地だった私は急に現実に引き戻された。


 何気なく教壇近くの席の奈緒に視線をやる。


 ちょうど奈緒も、私のことを上半身を捻って振り返るようにして見ていて、バッチリ目が合った。