「そういえば、皆人くんのクラスの子にコピらせてもらったノート、渡した?」


 奈緒が思い出したように言った。


「え? あ… それは…」


 うかつにも、動揺してしまった。


「何?そのうろたえぶり… あ! さては…」


 探るような目で奈緒が見てくるから、私は大きく溜息をついた。


「うん、土曜日に渡しに行った。でも必要ないって言われた。」


 笑って誤魔化した。


「それだけ?」


「そう、それだけ。」


「ふ~ん、だからかぁ。今日皆人くん学校に来たんだ。」


「いいえ、全くもって無関係。ねぇ、そう言えば、丸山くんの試合、今度の日曜だっけ?」


 どうにも苦しくて、無理やり話題を変えた。


「え? あ、うん。」


「応援行くんでしょ? 私も行こうかな。」


「ほんと? やった、一緒に応援よろしく。」


 奈緒は、疑うこともなくあっさり私の話題変換に乗っかった。