「そうじゃなくて… なんていうか、学校来たからって、すっかり吹っ切れた訳じゃないだろうし。だって、あんなことがあったんだもん。」


「まぁ、そうだけどさ。でも一歩前進って感じじゃない?」


 奈緒は屈託なく笑う。


「無理してるんじゃなかったらいいけど…」


 私はそれが心配だった。


 私とあんなことになったから、それで皆人くんは、私に気を使って学校へ来てくれたんじゃないかって…


 そうしないと、私の好意を無駄にすることになるとか、皆人くんのことだから、そんな風に考えていそうで、それが不安でした。


 あの日のことを、私が皆人くんを慰めるためにそうしたんだと、絶対皆人くんは思い込んでいるから。


「だったら、本人に確かめれば?」


 奈緒はそう言って、悪戯っぽく笑った。


「『皆人くん、無理してるんじゃない?』って? 無理だよそんなの!」


 少し膨れて言い返す。