「多恵ちゃん、ベッド行こ。」
皆人くんがそう言って私から離れようとしたので、私は皆人くんの胸元を掴み、
「ここでいい。」
訴えるように、切なる願いを口にした。
どうかお願いです、この甘美な営みを中断しないでください。
「背中痛いだろ?」
皆人くんが私を気遣ってくれているのが嬉しい。
「どうせもっと痛いことするんでしょ!?」
嬉しいくせに、この上なく幸せなくせに、意地っ張りな私は、こんなつまらない皮肉しか言えない。
「とんでもない処女だし。」
皆人くんが笑った。
その笑顔が、心からの笑顔に見えて、私の心にポツリと小さな明かりを灯した。



