皆人くんの家は静まり返っていて、インターフォンに応える人は誰もいなかった。


 でもこの中に、絶対皆人くんはいる。


 鞄から携帯を取り出し、皆人くんにメールを送った。




『出てきてくれるまで、ずっと家の前にいるから。』




 このメールを皆人くんが見てくれますように…


 しばらくして、玄関のドアがゆっくり開け放たれた。


 皆人くんは、疲れた笑顔を私に向けた。


「多恵ちゃんかぁ… どうせセールスかなんかだと思ったから。」


 いつもどおりを装った軽い口調が、とても痛々しくて、思わず涙が溢れそうになる。