「普段は誰とも話さないんだけど、カメラって言葉聞いた途端、急に目の色変わって、最初会った時、頭いかれてんのかとかと思ったけど。
それ以来、繭乃と一緒にいる事が増えたんだ。
いい奴だから、今度紹介するよ。」


あぐらをかき、ニッコリ笑うその顔は、初めてあった時より優しいかった。


『なんでそんな話し聞かせてくれたの?』


「なんでだろ? よく分かんないけど、綾の前では素直な自分で居られる…」


『誰かに話しちゃうかも、とか考えなかった?』


「綾はしゃべらないよ。
アイツ等とは違うもん」


『…そんな事言われたら、話せないじゃない』


「アハハ!! 話す気ないくせに」


確かに話す気なんて更々ないけど、素直に頷くのをまだ許せない自分が残ってるのも確かだった。 ─そして、昼休み以外ですれ違ってもお互い声を掛けるようなこともしなかった。
特に深い意味はないけど、向こうも話しかけてくる様子はなかったし、あまり深く関わって恨みを買うのも嫌だし。
何よりめんどくさい。


「綾、今日の弁当のおかず何?」


昼休みにアイツがいる状況に慣れた頃、ふらっとやって来ては私のおかずを一つ奪って行く事が増えた。