「笑った顔可愛いじゃん!!」


『…笑ってません。
今のは…』


「今のは?」


『今のは、歯に物がつまった、気がしただけ…』


椅子を回転させ、恥ずかしくなって俯くその後ろから、笑いを堪える声が漏れ聞こえた。


『…笑いたいなら笑えばいいじゃない!』


「お前ホントにおもしろいな! 俺があった女の子の中で一番かも」


ドサッとベッドに座るアイツは、小さく笑うと急に真剣な声で話し始めた。


「みんなさ、俺の顔にしか興味ないんだよ。
いくらテストでいい点とっても、いくら真面目に過ごそうとしても、そんな事に興味はない!
俺と歩いた奴は、勝手に羨ましがられて人気者になる。
その影に隠れた奴らは、妬んで勝手にありもしない噂をばらまき始める。」


『あの噂、嘘なんだ』


「当たり前。綾みたいに素直に信じた奴らからは白い目で見られるし…
嫌いなんだよね、自分の顔。
てか、弟いんだけどさ、瓜二つの。
双子ってやつ?
頭よくて、運動出来て、同じ作りなのに時々アイツが羨ましくなる。
そんな弟にまで嫌われてんの。
でも、繭乃は俺を顔で判断しなかった。
ほら、綾に初めてあった時担いでた奴いたろ?」


『うん』