途中、名前を呼ばれた気がした…─
 意識がなくなってから、ずっとどこかをさまよってた。
夢と現実の区別もつかないほど、リアルな景色に今までの事が全て幻想だったんじゃないかって思ってた。
体育館裏に呼び出されて、文句言われて、殴られて…
水樹に何度助けてって叫んだだろう?冷たい目をした水樹が怖い…。


「 あ!、起きた」


『これも、夢?』


辺りを見渡し、自分が今保健室に居ることを知り、目の前でホッとしてる水樹に焦点を合わせた。


『水樹…』


「お前ずっとうなされてたぞ?」


『あ、夢か…』


あれ?、私泣いてる…


「綾、ごめんな。
俺があんな事頼まなきゃこんな事にならなかったのに…」


『助けて!って叫んだの。 夢の中で何度も、何度も…でも、助けてくれなかった。
夢の中の水樹は、冷たい目で私を見てた』


「夢の中の俺と、今いる俺は違う。
ずっと見てたんだぜ?、綾の事。
廊下ですれ違う度、目で追ってた
毎日保健室で弁当食ってるって聞いて、何度か近くまで来たんだけど、結局入れなくて」


『嘘…。』


掠れる声で否定した言葉に、ギュッと握られた手に力が入った。
ずっと握っててくれたのか、少し湿ってる。