「ありがとう、ごめんねこんな事頼んで。」


「水樹くんの頼みなだもん、断れないよね?!」


「ありがとう。気をつけて帰ってね!」


そんな会話の後ろで、力の入らない足でなんとか立つと、壁にもたれ歩いた。


「どこいくんだよ。」


『関係、ないでしょ…』


「…また…、そんなんで歩けんの?」


『ほっといて。 関わりたくない…』


「……。」


涙でぐしゃぐしゃな顔を見られたくなくて、ずっと俯いてた、途中しゃがみそうになるのをなんとか堪えながら。


『うっ…』


急に体が浮いた。


「ほっとけるかよ。」


『……。』


大人しく抱えられてるのは嫌だけど、歩けないんじゃ暴れても意味ないよね。


『…どうして』


「ん?」


『どうして、あの場所に居たの? 会話、聞いてたんでしょ?』


「バレてたか、いつから気づいてた?」


『「黙ってないでなんとか言え」辺りから。』


「そっか。 上手く隠れてたつもりなんだけどなぁ」


『同じ匂い、がしたから。』


「匂い?」


『うん…水樹の、香水の匂い。』


「…そっか。」


その言葉を最後に意識が途切れた。