『…ありがとう。』


「じゃあ。」


いつものアイツと違う。
アイツが教室をでた瞬間、机の周りにクラスの殆どの女子に囲まれ、質問攻めに合い、お昼が潰れた。


『はぁ…』


重たいため息を吐きながら、ゆっくり階段を下りた。
疲れたぁ…。
やっと帰れる。
靴を履き替えながら、ホッとしたのも束の間。
辺りが薄暗くなった。


「あんたが松本綾?」


気づいたら5人の女子に囲まれてた。
抵抗する間もなく連れて来られた先は、ドラマかって突っ込みたくなる場所だった。
体育館裏なら確かに声が聞こえにくいかも…
なんて冷静に考えたら、ひとりの女子が一歩前に出た。


「なんで呼び出されたか分かる?」


『……。』


「質問に答えてくださーい」


はやし立てるように周りの女子がチャチャを入れる。
なんとなく分かってた。
アイツ絡みだって事。
でも、なにも答えなかった。
関わりたくない。
ただそれだけの理由で。
 本音はどこかで現実逃避してた。
今の状況が嘘だよと誰かに言って欲しくて、下を向きギュッと目を閉じた。


「水樹くんとはどういう関係ですか?」


「水樹くんに馴れ馴れしくしないでくださ~い」