今更戻せないよ…この状況に耐えられず、保健室を出た。
食べかけのお弁当が、床に落ちるのを背中で聞きながら、一気に屋上まで駆け上がった。


『ハァ、ハァ…』


鍵の閉まった扉を背に、しゃがみ込んだ。


『はぁー、何してんだろ、私。』


いつの間にかアイツの事好きになって。
“嫌い”なんて言っちゃったけど、本当は逆なんだよ…
今のままで良かったのに、嫉妬までしちゃって…あんな悲しい顔まで。
最後に見たアイツの傷ついたような横顔が何度もチラついた。


『これからどうしよう…』


 ─その事が合った翌日から保健室に行くのを止め、アイツを避けて過ごした。


「綾ちゃん今日も保健室行かないの?」


『うん、浦田先生に怒られちゃった』


初めて友達に嘘をついた、3日目のお昼休み。
急に教室がざわつき始めドアに目を向けた。


「綾って子、いる?」


「ねえ、水樹くんじゃない?!
松本さんとどんな関係なんだろう?」


至る所からそんな声が聞こえてきた。
アイツは私を見つけると、真っ直ぐきた。


「これ、ないと困るだろ。」


コンッと机に置かれたのは、あの日忘れたお弁当箱だった。