『あっ…』


靴をは履き替えてると、視界にアイツの姿を見つけた。
今日は珍しく男子と一緒にいる。
この間倒れた人かな?
無意識に目と意識がアイツを追ってた。


「綾、行こう?」


『うん。』


葉瑠に笑顔を返し、アイツと逆の方向から教室に向かった。


「今日は違う景色ですね。」


『うん、たまにはいいでしょ?』


いつもと違う方向に変えても、なにも言わずに付いてきてくれる葉瑠。
は嬉しそうに少し先を歩く。
そう言えば、私、葉瑠に悩み打ち明けた事ってあんまり無いかも…ってか記憶すら曖昧…。
 ─授業が始まり、あまり集中出来ないまま終わった。
トイレに行った帰り、見慣れた光景が目に入った。 嬉しそうに女の子と話すアイツの姿。
見慣れてるハズなのに、今日はなんだか見たくない。
思わず伏せた目に、握りしめた手が見えた。


『…ありえない。』


手を見ながら呟いた一言に、胸の奥で何かがざわついた。
そのざわつきが何を意味するのか、薄々気づいてはいたけど、認めたらアイツの罠に掛かったようなもんじゃない。
そう言い聞かせながら何度も同じ言葉を繰り返した。


『ありえない、ありえないよ。』