夜獣3-Sleeping Land-

僕は空気爆弾を発動させて石を蹴り上げる。

石はデザイアに近づくにつれて勢いをなくし、下に落ちた。

「単純な考えですね」

石は無意味か。

デザイアの意思が石に集中しているから、石が落ちたのか。

それとも、デザイアの意思のないところでは石はスピードが落ちないのか。

試す必要はあるが、デザイアに不意打ちを喰らわせるのは一人では無理だ。

渚は家の屋根で様子を見ている。

渚がデザイアの気配を知っているという事はデザイアも渚の位置関係を把握している。

渚に頼るのは無意味だ。

渚を盾にして特攻するつもりもない。

それでは僕が強くならない。

目の前の女が糧にならない。

「終わりですか?」

デザイアが僕の方へと歩き始める。

僕は拳を握り締めた。

「お前を殺すまでは、終わるはずがない」

退く気はない。

僕はデザイアのほうへと駆け抜ける。

「死ぬようなものですね」

「どうでもいい」

拳を打ち込もうとするとスピードが衰えて、デザイアに届く前に止まる。

「何の策もなしで、勝てるとでも思ってるんですか?」

「黙れ」

再び拳を放とうとする。

「非常につまらない人ですね」

僕の拳が届かない。

しかし、デザイアの掌は僕の胸に届く。

「掃除も終わりますね」

「終わるのは、お前だ」