夜獣3-Sleeping Land-

「出るぞ」

上着を着用し、王の討伐へ出る準備を行う。

「一人で行くのですか?」

後ろの渚は暗い顔になりながらも、僕に問いかけた。

「お前は奴に勝てないと思っているのだろう?」

「はい」

「僕は乾を殺すまで死ねない。それをお前は理解しているはずだ」

「はい」

「奴等と共闘する」

「耕一さん」

渚の顔色が変わる。

それは安堵したような、不安な色が消えた。

「そんなものは一時的なものだ。終われば奴等を潰す」

「すいません。私に力があれば、あなたが戦いに集中できるんですが」

「謝る暇があったら、奴を倒す方法を考えろ」

「神崎、貴様」

僕に近づこうとすると、渚が僕の前に出た。

「相場さん、私は耕一さんが少しでも考えを変えてくれた事が、嬉しいんです」

渚は相場を宥める。

「渚がこの男によくする理由は分かる。でも、渚には何の落ち度もない。全てが不当な扱いだ。そんな事は許せない」

「ありがとうございます。相場さんのお気持ちも、凄く、嬉しいです」

頭を下げた渚に、相場は何も言えなくなった。

変わりに僕を睨みつける。

気にも留めず、僕は扉を開ける。

そこには、奴等の仲間の孝二という男が立っている。

その目には、どこか苛立ちと苦しみが混ざっている。

「神崎、頼む。力を、貸してくれ」

そして、今まで以上に、低い姿勢で僕に協力を頼んできた。