翌日。

バイトのある僕は、準備を整えていた。

「耕一さん?」

先ほど起きた渚は、寝癖をつけながら起き上がる。

「バイトがある。お前は寝ていろ」

「あの、私も、何かしないと」

「好きにしろ。だが、罠に落ちるような醜態だけは晒すな」

「はい」

悪態をついた僕にも動じず、笑顔になった。

何が、そこまで嬉しいのか。

「いってらっしゃい」

手を振る渚を背に、僕は進もうとした。

しかし、僕は踏みとどまる。

そして、渚に振り返る。

「いや、お前は動くな」

「え?」

「昨日の奴が近所にいるとするのなら、お前は確実に狙われるかさらわれる。いいか?お前が家を出る時は、僕と共に出てもらう」

「前回の事で私も自分の無力さを痛感しています。ですから、あなたの指示には従います」

「ああ」

家にまで来られたとしたら、どうしようもない。

しかし、バイトをさぼってまで、渚の面倒を見ていられない。

八時間だ。

八時間、何も起こらなければいい。