風呂から出ると、ストーカー女を無視して銭湯を出た。

渚はまだ出ていない。

髪の長さが違う故に、乾かすのにも時間がかかるのだろう。

十分程度したところで、渚が出てくる。

「すいません、お待たせしました」

湯気を立たせながら、渚が出てくる。

「問題ない。帰るぞ」

「はい」

普段よりも髪の艶が眩しい。

「ちょー待ったりいな」

背後から出てきたのは先ほどの茶髪の男だ。

「また、お前か」

僕は渚の前に立つ。

「さっき、兄さんが直接聞け言うたんやろ。姉ちゃん、名前なんていうの?」

「雪坂渚、です」

「やっぱ、そないか」

何か、含みのあるような言い方で笑っている。

「耕一さん、彼は、能力者です」

渚はすぐにでも判断できるようになっている。

催眠術のかかった時とは大違いの、識別速度だ。

「都合がいい」

「なんや兄さん、別に争うつもりなんかないで」

「関係ない。お前が能力者である以上、倒して強くなる」

「怖い兄さんやな」

僕は拳を握り締め、突っ込む。