「先輩、お茶くらい出してくれてもいいんじゃないですか?」

「何故、お前にお茶を出さなくてはならない」

「ええ、真由は先輩と話したいですから」

閉めようとしても、足が邪魔である。

「ち」

無駄に能力を使うのも、もったいない。

だが、一度女を上げれば、付け上がる。

女は確実に勘違いをしている。

「大声上げますよ?」

「脅しか、下らない」

「すう」

女は大声を上げるために、息を吸い込んだ。

「あの」

女の隣から、別の女の声が聞こえてくる。

僕と真由は新たなる女へ視線を移した。

「渚」

僕は、扉を開ける。

「お久しぶりですね。耕一さん」

不老とも言える宇宙人は、半年ぐらいでは何も変わる事はない。

ベージュのコート、ブーツと手袋を着用して立っている。

足元には旅行用の車輪付きケースが置かれてある。

「何をしにきた?」

「耕一さんに、会いに来ました」

白い息を吐きながら、笑顔で答える。

「何々、先輩の彼女ですか?」

真由は視線を僕達にやりながら、気に食わない顔をしている。

「彼女、ではないですね。でも、耕一さんは私の大事な人です」

「そうですか。でも、今は真由と取り込み中なんで、帰ってもらっていいですか?」

「黙れ」

僕は、静かに真由を威圧する。

「お前には帰れと言った。次に聞かなければ本気で打つ」

もし、これが問題になったとしても、バイトを止めればいいだけの話だ。