夕刻が迫り、何ら収穫はなかった。

女も学校に戻ったようだ。

「ち」

もしかすると、日本にいないのではないか。

それも、何度となく考えた事だ。

海外へ行くにしろ、金がかかる。

「何が目的だ」

一体、何に行き着こうとしているのか。

能力者の研究をした事で、何を結果として導き、何を得ようとするのか。

それがよく解らないのだ。

能力者に何かの秘密があるのか。

歩きながら考えて、アパート前に辿り着いた時には夜になっていた。

夜になっているのは、少し遠くまで歩いていたせいだ。

アパートの二階にある部屋に戻るために、階段を上がると僕の部屋の前に人が座っていた。

「あ、先輩、どうもです」

「お前」

ストーカーじみた行為に、言葉を失う。

「まさか、先輩が家の横にあるアパートだったなんて、知りませんでしたよ」

「さっき言った事を忘れたのか」

「忘れちゃいませんよ。でも、それ以上に、興味が沸いちゃって。だって、女の子に対していきなり拳を振るおうとする人ですよ?逆に興味出ちゃいますよ」

女はまくし立てるように語る。

何もわかっていない。

能力者に関わった者の末路に、幸せな未来などないという事を。

それが、興味本位であるならば、回避する事も難しいだろう。

「家が近いのなら、帰れ。僕はお前を必要としていない」

僕は扉を開けて、部屋に入ろうとする。

しかし、女は新聞勧誘の人物のように足を挟んだ。