足を進めていると、後ろから女が付けてくる。

「何だ?」

足を止め、振り向く。

「先輩、それはあんまりなんじゃないんですか?同じバイトの仲間じゃないですか」

「知るか」

僕は再び足を進める。

女も同じ方向に歩調を合わすかのように、足を進める。

無視し続けて歩き続けると、大きな公園が現れた。

「久しぶりだなあ」

女が声を上げるが、興味はない。

公園の中には、浮浪者が幾人かいるようだ。

「汚いですよね」

女は蔑んだ声を上げた。

「いつまで付いてくるつもりだ?」

「先輩って謎の男って感じじゃないですか?真由、凄く興味あるんですよ?」

「帰れ」

無駄に周囲をうろつかれても、自分としてもやりにくい。

「授業とかつまんないし、先輩おいかけていたほうが面白いですよ」

女が単位を取れず、高校を中退しようが関係はない。

ただ、余計な事を起こして、自分の不利を招かれてはたまったものではない。

拳を握り締め、女の顔の真横に放つ。

風を切り、女の髪が軽く浮かんだ。

「バイト以外で声をかけるな」

目を皿にした女は声を上げる事を失っていた。

僕は背を向け、女から遠ざかる。