「邪魔だ」

周囲に目を映すと、僕の隣に新聞が落ちている。

拾い上げて読んでみると、少し前の新聞らしい。

要らない情報を捨てていき、ページをめくっていく。

そこには、見覚えのある顔が映っていた。

「渚に催眠術をかけた男、か」

飛び降り自殺の記事らしい。

自ら命を絶ったか。

自分の意思か。

それとも、催眠術なのか。

真実は知らないが、余計な事をしなければ死なずに済んだだろう。

能力者に関わった故の死だ。

僕は新聞を閉じ、ベンチに戻した。

「どうするか」

もう少し、探索を続けるのもいいかもしれない。

僕は立ち上がると、足を進めた。

早足になりながら商店街を抜け、先にある歩道を歩き続けた。

見上げれば、一番近い『藍野高校』に辿り着いていた。

静かに授業をしているようだ。

高校に、乾はいないだろう。

僕は高校を通り過ぎて、足を進める。

「あれえ、先輩、何やってるんですか?」

再び、先ほどの女が校門を抜けてくる。

藍野高校の生徒だったらしい。

今度は、面倒なのが複数いるようだ。

「用はない」

「まさか、真由についてきたとか?」

僕は会話を無視し、真由という女を通り過ぎた。