風呂から出ると、老婆にコーヒー牛乳を勧められる。

断る理由もなく飲み干し、金を払った後に『村正』を後にした。

外の寒さは相変わらずだ。

「動くか」

湯冷めなど気にせず、僕は周囲を探索する事にした。

能力者が誰かなど感じることもなく、ただ歩くだけにすぎない。

町並みは綺麗とはいえず、どこにでもある住宅街が続く。

更に五分歩けば、商店街に出る。

サラリーマン、学生、主婦。

年齢層は豊富だが、目的の人物はいない。

彷徨いながら時間を潰したが、見当たらない。

休日は鍛錬に使いたいところだが、こればかりは怠れない。

昼になり、近くにあった公園のベンチに座る。

「くそ」

冬風が、防寒着を通して身に染みる。

今年は去年よりも寒いとの情報が流れている。

「先輩」

背後から声をかけられる。

振り向けば、制服を着た十代の女がそこにいた。

同じファミレスのバイトをしているが、名前は覚えていない。

必要のない触れあいは避けてきたからだ。

「こんなところで何やってるんです?」

何故、僕に話しかけて来るのか不思議であった。

仕事中でも、仕事以外の事では話した事のない人物だ。

「何も」

素っ気無く答える。

「先輩って、いつも休みの日は公園のベンチで寛ぐような人なんですね」

「何がいいたい?」

「他にする事ないのかなと思って」

「さっさと学校に行け」

「怒りました?」

「どうでもいい事だ」

女は諦めたらしく、僕から離れて学校に向った。