「ご迷惑をおかけしました」

「余計な事を言ってる暇があるのなら、やる事をやれ」

「はい」

渚は笑顔になり、僕の手をとった。

「あなたは、本当に、温かい人です」

「勘違いをするな」

「あなた自身がどのような態度であろうと、私はあなたの元を離れはしません」

「勝手にしろ」

渚は手を離し、家に戻っていった。

渚の言葉が本心かどうかなど僕にはどうでも良かった。

僕は渚の情報を待つだけだ。

再び、ウォーミングアップのランニングを開始した。

まだ街は沈んだままだ。

街を走り続け、ある程度の距離を稼いだ。

家に帰ってきた時には、体が熱を帯びて服が汗を含んでいる。

「はあ、はあ」

何か特別な事があるわけではない。

毎日の日課である、技術を高めるための空手の型を始める。

自分の能力を慣らすために解放し、人殺しの技の精密度を上げる鍛錬を行う。

壁の向こうの空気を爆破させる空拳。

しかし、高度な技であり、十回にニ回しか成功しない。

まだまだ精神集中と経験が足りない。

何度も何度も繰り返すが、一朝一夕では成果が出るものではない。

全身の筋肉と能力による疲労が重なり、悲鳴を上げ始める。

「はあ、はあ」

無理は禁物だ。