渚は脅迫の果てに、他にも何かしらの弱みを握られたのかもしれない。

「男と情事を続ければ、誰も不幸にならずに済むと思っているのだろう?」

「それは」

渚が戸惑っているところを見れば、イエスと言っているような物だ。

「僕を協力者として同等に扱うというのなら関係を切れ。出来ないわけでもないだろう?」

「可能です」

男さえも不幸にさせたくないのか。

それとも、渚が男との情事を楽しんでいたのか。

もし、見つかったとしても、やり方は他にもあっただろう。

しかし、それを言う必要はない。

「それでもまだ足りない。お前の望む事を言え」

予想していなかった展開なのか、渚は考え込む。

「解りました。でしたら、あなたに伽をお願いします」

「解った」

「すいません。こんな貞操観念のない私とは」

「黙れ。余計な事を口走るな」

「はい」

誰と寝ていようが構いはしなかった。

渚は渚であり、他の誰でもない協力者。

裏切り行為を働いたわけでもない。

「それと、男との関係を切った事を確実に示せる証拠を持ってくる事。何の情報提示もなしではやったとは思わない」

「解りました。松任谷真理と脅迫の件に関しましては、調査と処理をしておきます」

「ああ」

渚は乱れた衣服を直して、緩やかな表情に切り替える。