「渚ちゃん、おじさん好きだったのか」

いつの間にか、後ろにはアキラの姿がある。

「バイトはどうした?」

「そんな事どうでもいいわ。どうすんのよ?耕一」

「どうもしない」

渚が男と身体の関係があった。

だから、何だというのだ。

渚は、協力者。

そう、それだけの関係。

しかし、胸の奥底は剥がれる事のないドロドロとした物が張り付いている。

男はタクシーに乗って別れ、渚が一人になる。

「何か、事情があるのよ」

「お前はバイトへ行け」

「解ったわよ」

何も聞かず、アキラはバイト先へ向っていった。

渚の表情を見ると、活気は無く、陰惨さを思わせる。

男との情事が本人の意思かどうかであれ、きっかけはある。

今は放っておく?

時と場合を考える?

必要ない。

「渚」

僕は、渚の目の前で立ち止まる。

「耕一、さん?」

僕が今の時間帯に街にいるのが、予想外だったと思っているのか。

気まずそうな顔をしている。

「すいません、私」

「お前は、協力者だと言ったな?」