いつもよりも早く起床する。

「耕一、事故だって」

自室から抜けて、朝食を取るためにキッチンへ向かうところだ。

バイト前のアキラが、昨日と同じく情報を持ってきた。

「近所で二日連続で死体が出るなんて、物騒すぎじゃない?」

「偶然が重なっただけだろう」

「偶然、ねえ」

腑に落ちないアキラだったが、何の根拠もなく能力者と決めてはならない。

だからといって、戦いとなれば、他人を殺したからという理由など必要はない。

ただ、強くなりたいから闘うのだ。

「渚は?」

いつもなら居るはずの渚がいない。

「用事があるって、昨日の晩から出て行ったよ」

「そうか」

普段は、夜中に一人で出かけることのない渚だ。

珍しい事もある。

「耕一さあ、ぶっきら棒な態度とってたら、渚ちゃん、他の男に取られちゃうよ?」

「どうでもいい」

「ホント、何が大切なのか解ってないわねえ」

アキラを放っておいてキッチンへと向い、焼いたパンを食べる。

その後、基礎体力を付ける為のランニングに出発する。

学校を通り街を通る。

早朝のせいか人影はほとんどない。

しかし、街中で見かけたのは、見覚えのある髪の長い女。

「渚か」

渚の隣にはもう一人、見知らぬ中年の男がいる。

男は渚の肩に手を置いてる。

よく見ると、二人はラブホテル街から出てきたところだ。

それは、渚と男に情事があったという事を示している。