夜獣3-Sleeping Land-

「あなただってこの男には苦しまされたでしょう?」

僕から視線を逸らさず、相場に意見する。

「それで真理が手を汚す事は間違っている」

「相場さん、もう、遅いんですよ。すでに私の手は汚れています」

能力の緩む事がなく、隙は見せない。

「あの男が死ぬ事で、皆が幸せになるというのなら、私は自分の力で、あの男を殺します」

「それを望むのは真理だけだ」

いつのまにか、背後に止めてあった車の中から女が出てくる。

それは先ほど、事故で重体に陥った桜子だ。

相場が回復させたのだろうが、完全ではない。

「私は渚を最後まで裏切る事は出来ない。それは恩義にそむく事になる。だから、この男を生かさなければならない。それは、渚がいなくなったとしてもだ」

桜子が松任谷によろけながらも近づいていく。

「真理。私は、耕一のせいだなんて思ってない」

「あなたはこいつのせいで、苦しい思いをしたじゃない!」

「そうだね。でも、もう、いいの。この人は、この人なりに私に忠告してくれていた」

桜子に気をとられているせいか、能力の効果が薄まった。

指先が動く。

今の動揺、それは奴を糧にするチャンスとも言える。

揺らぎは、動揺は敗北を招く。

それを知らぬ者に、明日はない。

「邪魔は、するなと、言ったぞ」

僕はすでに打つ準備をおえていた。

「桜子、避けて!」