夜獣3-Sleeping Land-

僕は、病院の前で足を止める。

「ご機嫌はどうだい?」

そこに立っている。

あの男が。

全てを、壊した、男だ。

「随分と尖ったじゃないか」

黒いスーツを着込み、笑顔を見せる。

僕の腕の中で瀕死状態の桜子がいるのにも関わらずだ。

自分の体が震えているのが分かる。

それは恐怖ではない。

いつ、前に飛び出してもおかしくない衝動を抑えているせいだ。

「さあ、俺に抱いている恨みを解放したらどうだ?」

鎖につながれている獣が、鎖を引きちぎろうとしている。

「佐伯夕子の事を、忘れたのか?」

全てが挑発だ。

すぐにでも、病院に行かなければならない。

自分の選択のせいで、夕子と同じ境遇をたどらせるのか。

僕は、獣を、押さえつける。

「今は、お前に構っている暇はない」

僕は足を進める。

「選択の取捨をお前は間違えているよ」

乾がなんと言おうとも、それを無視し続ける。

「お前は自分の可能性を捨てた。後悔するんだな」

乾は姿を消した。

仇をとることが全てだったはずだ。

しかし、僕は、その心を、解放する事が出来なかった。

僕にとって、それだけが生きがいだった。

だけど、それは叶わなかった。

僕は病院の自動ドアをくぐる。